脳血管障害
主な神経疾患診療の解説
■疾患名
脳卒中・脳血管障害
■概要
脳卒中とは、脳の血管の様々な異常・脳血管障害により急激な神経症状(麻痺や意識障害など)を来す疾患群です。当科では主に、脳梗塞・脳出血が起こってしまった場合の内科的治療や、その後の再発予防治療を担当しております。
- 脳梗塞:脳の血管が閉塞する(詰まる)、狭窄がある(狭い)ことで脳の細胞が壊死してしまう病気
- 脳出血:脳の血管から脳の実質内へ出血を起こす病気
また当院は、脳神経外科と協同で脳梗塞に対する血管内治療を脳神経内科医も積極的に実施している数少ない施設になります。その他、脳梗塞の原因となりうる動脈の狭窄症(頚動脈や頭蓋内動脈)に対する内科治療・血管内治療なども行なっております。
■症状
- 麻痺:特に半身が動かなくなる片麻痺という症状が多いとされます。
- 感覚障害:片麻痺と同様半身の感覚が鈍くなる症状が多いとされます。
- 意識障害:呼びかけられても覚醒せず返事ができない状態です。
- 失語:意識はあるが言葉がうまく出てこない、あるいは言語が理解することができず支離滅裂な返答になってしまうなど、言語の発話や理解の障害を指します。
- 失認:左右いずれかをうまく認識することができない半側空間無視など、視覚や感覚の認識が障害される状態を指します。
- 共同偏視:左右いずれか片方に両目が向いたままの状態を指します。
特にこれらの症状が急激に発症した場合、脳卒中の可能性が高くなります。
■診断
- 頭部CT/頭部MRI検査:脳出血や脳梗塞を確定診断するための検査です。出血や梗塞の場所や広さ、あるいはどの血管に異常があるかを特定することが可能です。
- 脳血管造影:カテーテルの検査で脳の血管異常(閉塞・狭窄している血管の場所・形や出血の原因となる血管異常の特定など)を詳細に見ることができる検査です。CTやMRIなどで異常が特定された患者さんが検査の対象となることがあります。
その他、血液検査(コレステロールや糖尿病など動脈硬化の原因はないか)、心電図(心房細動と呼ばれる不整脈など、脳梗塞の原因はないか)、心臓超音波・頚動脈超音波検査(脳梗塞や血栓の原因となる心臓・血管の構造異常はないか)、脳血流シンチグラフィー(動脈の狭窄や閉塞がある場合、脳の血流がどの程度保たれているかを見る)を実施しております。
■生活上の注意
脳梗塞や脳出血を起こされた患者さんは、一般的に再発をする危険性が高いと言われています。脳梗塞であれば抗血栓薬(血をサラサラにする薬で血栓を作りにくくする内服薬)や他動脈硬化の原因(糖尿病やコレステロール、高血圧など)の治療、脳出血であれば特に原因として多い高血圧の治療を継続することが重要となります。また、一般的な生活習慣病にならないような食生活(栄養指導)や、体の運動能力が落ちないための適度な運動、リハビリテーションも重要となります。
これ以外にも患者さんによって必要な再発予防は個人差がありますので、詳しいことは担当の医師にお聞きください。
■治療
脳梗塞
発症早期の脳梗塞では、近年になって血栓溶解療法(rt-PAと呼ばれる血栓溶解薬を点滴することで血管を開通させる治療です。発症4.5時間以内の患者さんが対象になります)、血管内治療(カテーテルで閉塞した血管を開通させる治療です。発症最大 24時間以内の患者さんが対象になります)で症状を改善させることが可能となっております。発症間もない頃は脳梗塞の症状悪化や、その他全身の合併症(感染症や心臓の問題など)が悪化することもあり、予防・治療のための内科治療を行なっております。
脳出血
早期より血圧を下げる降圧薬の投薬や、脳の浮腫み・圧迫を予防する投薬など内科的治療を行いますが、血腫の大きさや重症度によっては脳神経外科による開頭血腫除去手術の適応となる場合もあります。